俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
飾りけのない真っ直ぐな言葉が胸に刺さった。

切なさにも似た甘い痺れが胸を締めつける。


「でも、あの日の私の態度は散々で……」

ただのひどい酔っぱらいだったし、迷惑しかかけていない、みっともない姿だったはずだ。


どこにも魅力的な要素なんてない。

あの日の自分の失態には、今でも頭を抱えたくなる。


「そうだな、思いつくままに話して泣いて……それが逆に新鮮だったよ」

思い出したように相好を崩す愁さんの吐息がかかりそうになる。

それすらも私の胸を甘く締めつける。


「しかもそのあと、板谷の名前を利用しようともせず、ただ自分の非礼と感謝を告げて手紙まで渡してくるなんて予想外もいいところだった」

私が逃げ帰った後しばらくして目を覚ました彼は、頼子さんに連絡をとったそうだ。


再会を画策すると、実姉に壮絶な反対を受け、邪魔されたらしい。

頼子さんが愁さんとの接触を阻んでいた過去の会話をおぼろげに思い出した。


「沙和の勤務先を訪問した後、本気で大事にする覚悟があるのか姉貴に迫られたよ。もちろん、迷う気持ちはひとつもなかった」

真摯な声がゆっくりと身体中に沁みこむ。

鼻の奥がツンとして抑えきれない涙が一粒こぼれ落ちた。


「本当は不器用で、逃げ出したくなる時も足を踏ん張って頑張っているところも、お人好しで誰よりも温かい気持ちを持っている、沙和のすべてが可愛くて愛しい」
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