俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
「……きちんと考えます」

火照る頬を隠すようにうつむいて返事をすると、髪を優しく梳かれる。


その仕草ひとつひとつが切なくて嬉しい。

この人に出会ってから髪を梳かれる心地よさを知った。


「さっき千奈さんの前で言った言葉を早く実現したい」

「え?」

「沙和は俺の婚約者って話」


婚約……実現? それって……!


さらりと言われたセリフに思わず目を見開いた。

以前にも言われていたが、気持ちを通い合わせた今では言葉の重みが違う。


咄嗟に返事ができず、ただ黙って綺麗な目を見返すしかできない。

落ち着いていた鼓動が再び暴れだす。


「俺の気持ちは揺るがないから、覚悟しろよ? 絶対に逃がさない」


妖艶に口角を上げて、長い指が撫でていた髪をひと房掬い上げる。

物騒にも思える言い方なのにどうしてこんなにも甘く胸を締めつけるんだろう。


「……わかった?」


答えなんてわかっているくせに、否定なんて絶対受け入れてくれないくせに尋ねてくるこの人は本当にずるい。

火照る頬を持て余しながら小さく頷くと、満足そうに掬い上げた髪にキスを落とされた。


「本音を言えば、家を介した正式な婚約を今すぐして、世間に公表したいところなんだけどな。それからすぐに入籍をして離したくない」

「えっ、それは……!」

「……沙和が戸惑う気持ちは理解しているつもりだが、誰にも奪われたくないんだ。だから早く引っ越してきてほしい。でないと俺が持たない」

色気たっぷりに囁かれて、もうどうしていいかわからない。
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