俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
愁さんが暮らしている都内一等地にあるタワーマンションに引っ越しをし、最近になってようやくその生活にも少しずつ慣れてきた。


なにしろ自宅は四LDKととても広い。

築一年にも満たない新しいマンションで、最初に案内された時はその豪奢な佇まいに気後れしっぱなしだった。

彼の立場を改めて実感し、そんな人の婚約者が私でいいのかと再び自信を喪失しかけたくらいだ。


「沙和さんが引っ越しを決めてくれてよかったわ」

「本当にね、早く決断してくれるように説得してほしいとか、愁ったらしつこかったのよ」

「す、すみません……」

「いいのよ。あんなのただの独占欲なんだから、焦らしておけばいいの」

あっけらかんと言う頼子さんは、さすが愁さんの姉だ。


「愁くんってあんなに嫉妬深い人だったんだって驚きました。やっぱり本気の相手には態度が変わるものですねえ」

「そうそう、小さい頃からやたらと策士で腹黒くて気の回る弟だったけど、基本的にはなにに対しても感情的にならず冷静だったのよ。社長という役職には必要な素質かもしれないけど、沙和ちゃんが絡むと目の色が変わるんだから」

「休みの日に沙和さんを連れ出そうとしたら、やたら嫌味を言ってくるんですもの。どれだけ独り占めしたいんでしょうね」

「あら、千奈ちゃんも? 私もなのよ。しかも行き先を根掘り葉掘り聞いてくるし、帰りは送るって言ってるのに迎えに来るし、鬱陶しいったらないわ」

ふたりの年長者の会話に羞恥で居たたまれなくなる。


頬が熱い。
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