俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
『……近い将来というのがどれほどの期間なのか具体的に示していただきたい』

事前に挨拶に行くとは告げてあり、内容は薄々わかっていたであろう父は、渋面を貼りつけながら問い返す。


『お、お父さん……!』

『当たり前だろう、大事な娘の一生がかかっているんだ。うやむやにはできない』

『そうだな。姉さんはお人よしだから、すぐに言いくるめられそうだし』


弟にこの言われよう……なんだか居たたまれない。


『……愁さんにはすぐに入籍したいって言ってもらったの。でも私の心の準備ができていなくて……』

言い訳のように聞こえるかもしれないが、事実だ。


そう、こんな中途半端になってしまっているのは性懲りもなく覚悟ができていない私のせいなのだ。

この人と歩む将来に向けての躊躇いはまったくない。


ただ自信がないのだ。

当社の重要取引先でもある彼の伴侶が私でいいのだろうか。

なにも持たない私が周囲から認めてもらえるのだろうか。


携わってきたキッズカフェも今が大事な時期だ。

逃げていると思われるかもしれないが、せめて完成するまで待っていてほしいと思っていた。

大好きな場所を変える計画をやり遂げられたら、きっとひとつの大きな自信ができる。

任された仕事にはきちんと責任を持ちたい。

器用でもなく特別な力も持たない私は、ひとつひとつをやり遂げることでしか前に進めない。


その気持ちをうまく表現できない自分がもどかしい。
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