俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
ど、どうしよう……。


このまま知らぬ存ぜぬで誤魔化す?

でもそんな嘘をつくのは忍びない。


彼が庭園にいた事実を話すのは心苦しいが、後々いらぬ誤解をうんでしまっては元も子もない。

それに、彼は私についてなにも知らないはずだ。

不審者と思われたままなら困る。


『そう言われてみれば、沙和ちゃんに愁の話をしたことなかったわね』

「よ、頼子さん、ごめんなさい……!」

『えっ、ちょっと、沙和ちゃん、どうしたの?』

突然悲壮な声で謝罪する私に、頼子さんが驚いた声を上げる。


記憶を必死に掘り起こしながら、しどろもどろに説明する。

加えて、昨夜庭園でやけ酒もどきをしてしまった件も丁寧にお詫びし、その原因となった失恋についても話した。


『なんですって……沙和ちゃんをホテルに連れ込むなんて……許せない! 愁ったらなんて真似を……!』

話を聞き終えた頼子さんが怒りを込めて言い放つ。

「いえ、あの……?」

『怖かったでしょう? 大丈夫だった? あの愚弟のせいで、とんでもない事態を引き起こしてしまって本当にごめんなさい。この罰は弟にしっかり受けさせるし、謝罪もきっちりさせるわ。今すぐ探し出すから』

怒るところがずれていませんか、頼子さん。

……話がおかしな方向に向かっている気がする。
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