俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
「ねえ、いつになったら課長に告白するの?」

同期で親友の、個人向け投資商品の企画部に所属している名取(なとり)すずに尋ねられた。



ゴールデンウイーク明けの出勤日の昼休み。

まだ初夏というには早い季節にもかかわらず、気温は日増しにあがり、太陽は威力を増して輝いている。


晴れた日は好きなのでありがたいけれど、陽射しが強すぎるとそばかすが増えるのが悩みの種だ。

日焼け対策が面倒でついついさぼってしまう。


ここは本社十一階にある食堂だ。

東京と大阪の本社ビル内には食堂があり、仕事が立て込んでいる日や天気が悪い日などには助かっている。


本社ビルは二十階建てで、私の職場は十五階、すずの職場は十六階になる。

小鹿のように大きな目を持つ親友は、平均的な身長の私とは違い小柄で愛らしいが、竹を割ったような性格で好き嫌いがはっきりしている。


「のんびり片想いをしている場合じゃないわよ。課長が婚約したって噂を聞いたの」

カウンターで生姜焼き定食を注文しながら、眉間に皺を寄せたすずが小さな声で言う。


午後一時を過ぎた食堂はピークを越えたせいか、空席が目立つ。

ここはセルフ方式だ。

入り口を抜けてすぐのカウンターで、好きな商品を注文する。

カウンター席やテーブル席を入れると二百席以上あり、大きな窓からは都内が一望できる。
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