俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
レッスンが始まり、軽い休憩を挟みつつ、今日も和やかに時間が過ぎていく。

更衣室に戻り、いつものように着替えをする。


「最近、娘がやたらと公園に行きたがるの。近所の公園は遊具があってそれなりの広さがあるんだけど住宅地だからか、いつも混んでいるのよね。広い公園に行きたいけど遠出はなかなかできないし、見ているだけの私は暑いし、喉も渇くのよねえ」

頼子さんが困ったように言う。


その時ふと、近所の庭園が浮かんだ。

あそこは管理されているし、休日には小さな子ども連れの人も多く見かける。

開けた場所もあるので、小さな子どもが多少走り回っても問題はないだろう。


「私の自宅近くの美術館に広い庭園があるんですが、そこはいかがですか?」

「庭園?」


興味深そうに問い返され、場所、雰囲気、開園時間などを事細やかに説明した。

もちろん祖父と城崎さんの話も忘れずに。


「沙和がそんなに一生懸命に仕事以外で話している姿、初めて見た」

すずが驚きながら、失礼なセリフを口にする。

「沙和ちゃんはそこが大好きなのね」

「その積極性と興味を、同年代の男子に全力で向けてほしいんだけどね」

溜め息混じりに口にする親友を軽く睨む。

「素敵ね、娘に話して一度是非行かせていただくわ」

そう言って微笑む頼子さんは、とても優しい母親の目をしていた。
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