俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
「……東京営業部の同期の女性と婚約したんですって。半年後に挙式されるそうよ」
親友が硬い声で教えてくれた。
先週、濱田課長が上司に報告し、今朝明らかにされたという。
おめでたいニュースのため、あっという間に他部署にも広まったそうだ。
手の中で無意識に握りしめていた資料を受け取った親友が、背中をさすってくれる。
誰もふたりの交際については気づいていなかったみたい、と付け足す声がずいぶん遠くに感じられる。
「……戻る、ね」
「沙和、大丈夫?」
「ごめん、すず。心配かけて……」
やっとの思いで出した声は思った以上に掠れていた。
喉がカラカラに渇いていく。
すずの目には心配の色が浮かんでいる。
私を気にかけてくれているとわかるのに、いつものように笑みを返せない。
小さく口の端を無理やり持ち上げて踵を返す。
上ってきたばかりの階段を下り始める。
誰もいない空間がありがたかった。
足が鉛のように重い。
胸が張り裂けそうに痛い、ジクジクと治らない大きな傷口が心の真ん中にあいているようだ。
『心の中でどんなに想っていても、告白しなきゃ気持ちは一生伝わらないわよ』
『自分から行動しないとなにも変わらないわ』
何度もすずに忠告されていたのに。
一歩が踏み出せずに、ただ見ているだけだった。
そんな私に、一端の失恋を語る資格はない。
それでもやはり悲しい。
課長の隣に立つ自分の姿を、もう夢見ることすらできない。
親友が硬い声で教えてくれた。
先週、濱田課長が上司に報告し、今朝明らかにされたという。
おめでたいニュースのため、あっという間に他部署にも広まったそうだ。
手の中で無意識に握りしめていた資料を受け取った親友が、背中をさすってくれる。
誰もふたりの交際については気づいていなかったみたい、と付け足す声がずいぶん遠くに感じられる。
「……戻る、ね」
「沙和、大丈夫?」
「ごめん、すず。心配かけて……」
やっとの思いで出した声は思った以上に掠れていた。
喉がカラカラに渇いていく。
すずの目には心配の色が浮かんでいる。
私を気にかけてくれているとわかるのに、いつものように笑みを返せない。
小さく口の端を無理やり持ち上げて踵を返す。
上ってきたばかりの階段を下り始める。
誰もいない空間がありがたかった。
足が鉛のように重い。
胸が張り裂けそうに痛い、ジクジクと治らない大きな傷口が心の真ん中にあいているようだ。
『心の中でどんなに想っていても、告白しなきゃ気持ちは一生伝わらないわよ』
『自分から行動しないとなにも変わらないわ』
何度もすずに忠告されていたのに。
一歩が踏み出せずに、ただ見ているだけだった。
そんな私に、一端の失恋を語る資格はない。
それでもやはり悲しい。
課長の隣に立つ自分の姿を、もう夢見ることすらできない。