俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
……部屋に帰ってもきっとひとりで同じように悩んで泣いてしまうだけ。

どこか遠くに行って、この星をずっと眺めていられたらいいのに。


そうすればこの胸の痛みも、告白すらできなかった臆病な自分に嫌気もささずに済む。


そんな突拍子のない考えが頭をもたげた時、ふと思い当たる場所があった。

誰にも邪魔されずに夜空をひとりで眺められる場所がこの近くにひとつだけある。


すぐさま駅近くにあるコンビニに飛び込み、お酒を買った。

お酒はあまり強くないけれど、こんな日は飲みたい気分になる。

それに、今日は薄手のストールを持っているので、万が一気温が下がって寒くなっても大丈夫だ。


歩きだす足取りは、心なしか軽かった。

こんな状況ではなかったらきっと旅行前夜みたいにワクワクしていただろう。


目的地は大好きな庭園。

夜間は門扉周辺に街灯がついていて比較的明るい。

園内も防犯対策として庭園灯がところどころに灯されていると、城崎さんに聞いた記憶がある。


道中、頼子さんに入園の旨をメッセージで送ると、理由を詮索もされず了承の返事が来た。

けれど夜分なのでできるだけ早く帰宅し、庭園内に入ったらほかの人の侵入防止のため施錠するよう注意された。


庭園に到着し、バッグの中からキーケースを取り出す。

紛失防止のため、自宅の鍵と一緒にこのキーケースにつけた過去の自分を褒めてあげたい。



 * * *



ここで引き返せば私はあの男性に出会わずに済んだのに。

普段と違う行動なんてしなければよかったのに。

でもこの時の私はどうしてもこの場所を訪れたかった。
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