俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
3.「俺を覚えているか?」
人生で最悪の失態を犯した日から一カ月ほどが経ち、七月も半ばを迎えた。

蒸し暑さは日を追うごとに増している。

梅雨明けもそろそろかと天気予報では連日のように言われていた。


課長は入籍を済ませたと風の噂で聞いた。

その名を聞くたび、まだ少し心が揺れる。


あの日、連絡がつかなくなった私を心配し、すずがデートをキャンセルして自宅に来てくれた。

『頼子さんから連絡が取れないと言われた時は、生きた心地がしなかったわ』と叱られた。

本当にどこまでも迷惑をかけてしまい申し訳ない。

ただ、思いのほか元気な私の姿に驚き、一部始終を話すと豪快に笑った。


『頼子さん同様に沙和の無防備さには色々とお説教したいけれど、その人のおかげで一晩中泣きどおしにならなかったのだから、よかったじゃない。真面目一辺倒な沙和がまさかそんな真似をするなんてね!』

さすがは親友、豪胆な考え方をする。

すずに言われて、目覚めてから失恋でひと時も悲しんでいないと初めて気づいた。

それどころではなかったというのが正直な感想だけど、気が紛れて、さらには冷静になっている自分に驚いてしまった。


『二重の意味で感謝しなきゃね』

いたずらっぽく話していた親友の言葉が、なぜか胸に残っている。
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