俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
「いた、浦部さん!」


椅子に座ろうとすると、突然背後から声をかけられた。

大きな声にビクッと肩が上がる。

反射的に振り返ると、険しい表情を浮かべた東京営業部の営業担当、(はやし)さんがいた。


「は、はい」


どうしてここに林さんが? なにかあったの?


本部フロアには至急扱いやトラブルではない限り、営業担当者はほぼ来ない。

「見つかってよかった。至急三階の応接に来てくれないか。君の上司に許可は取ってあるから」

焦った様子で言われて戸惑う。

なにがなんだかわからない。


状況を知るべく上司の席にチラリと視線を向けるがあいにく不在。

頼りになる後輩も昼食で離席中。

私の質問に答えてくれそうな人物は周囲にいない。


「あの、なにかあったんですか?」

「えっ、知らないの?」

驚愕の表情を返されて首を傾げる。

「お昼休憩をとっていたので……」

「ああ、そうか、そうだった。大変なんだ、とりあえず時間がないから一緒に来てほしい。事情は三階に向かいながら説明するよ」

有無を言わせない口調で急き立てられてどうしようもなく、自席を渋々後にした。
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