俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
「板谷の取締役社長が来店されている?」


たった今、言われた言葉を復唱する。

「そう、十分ほど前に突然アポなしで来店されたんだ。皆、驚愕するわ、恐縮するわで大慌てだよ。営業部内はなにかトラブルでもあったのかとパニックになっているよ」


板谷と我が社の取引はそれなりに深く長い。

関係が良好というのも有名な話だ。


ただし、役員クラスは多忙だし、来店はおろか会社を訪問しても会えない場合が常なのだ。

その中で最も面会困難と言われている創業家の人間、社長がいきなり来店したとなると、それは慌てるだろう。


エレベーターホールの前で、林さんが早口で説明してくれた。

「トラブルなんですか? 今はどなたが対応を?」

「いや、取引を確認したけれどトラブルはなにもないし、不興を買ったわけでもない。今は営業部長が対応している。うちの社長は札幌出張中だし、外出中の副社長に連絡して今、至急戻ってきていただいてるところだ」

ますます意味がわからない。

そんな非常事態にどうして私が呼び出されるのだろう。


その疑問はすぐに解消された。
< 51 / 227 >

この作品をシェア

pagetop