俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
射るような視線が痛い。

それでもなくても見下ろされる威圧感がすごい。


不意に膝下丈のスカートの裾が気になり、身だしなみを整える。

下を向き、ギュッとすがるようにバッグを胸に抱きしめた。


「鍵」

端的に言われて、ビクリと肩が跳ねた。

慌ててバッグの中を探るが、指が震えてうまくつかめない。

はあ、と呆れたような溜め息が上から落ちてきて、ますます身体が強張る。


なんでこんな事態になってしまったんだろう。

今日は本当についていない。


「……お前に危害を加えるつもりはないから、落ち着け」

淡々とした低い声が耳に届く。


そう言われてもこの人の正体はわからないし、不安しかない。

それでもなんとかキーケースを探り当て、すくみそうになる足で必死に立ち上がった。


「……これ、です」

キーケースにつけた鍵を差し出すと、男性は目を大きく見開いた。

「確かに、ここの鍵だな……触れても構わないか?」

「ど、どうぞ。でも返してくださいね」

「……当たり前だ」

若干むっとした様子で返答されてしまう。


なぜそんな対応をされるのか。

このまま鍵を持って逃走されたら困るので、念のために言い添えただけなのに。
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