俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
彼は鍵を裏返し、しばらく凝視して、私の手に返してくれた。

思いのほか丁寧な手つきに驚く。


長い指がそっと私の手のひらに触れた。

その瞬間、トクンと鼓動が小さく跳ねた。

身体の奥がほんの少しだけ熱を持つ。


ちょっと待って、私、なんでこんなに動揺しているの?

鍵を返してもらっただけなのに。


「複製品ではないな。……誰から預かった?」

「よ、頼子さんから……」

「いつ?」

「先週です」

「……そうか」


男性はなにか考え込むような素振りをした後、はあ、と短く息を吐いた。


「……手荒な真似をしてすまなかった。それは確かにこちらで管理している鍵だし、君は正式に渡されたようだな」

「だから、最初から……!」

「夜も遅いこの時間帯に、女性がひとりこんな場所にいたら誰だって怪しむだろう」


謝っているのか叱責されているのかわからない態度に、少しむっとしてしまう。


「……誤解がとけたなら、それでいいです。あなたも頼子さんから鍵を?」

「……ああ」

< 7 / 227 >

この作品をシェア

pagetop