俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
4.「俺を本気で好きになれ」
翌日、営業部長には板谷社長との関係を邪推されるどころか、感謝されてしまった。

来訪はとても喜ばしいのだと何度も言われて、複雑な気分になった。


滞在時間は数十分にも満たなかったのに、その存在は本社ビル内の女性社員に強烈な印象を与えたようだ。


『ものすごいイケメン!』

『独身よね? 決まった方はいらっしゃるのかしら』

そんな噂話があちらこちらで連日のように囁かれている。


中身はあんなにも一般的な王子様像から程遠いのに、外見が極上で大企業の社長だと、やはりこうも違うのかと溜め息をつきたくなる。

こちらとしては、まったくかかわりたくない。


『さすがね、王子様』

仕事の相談のため内線電話をかけると、すずが楽しげな声を漏らす。

親友には昨夜電話をして、一部始終を話してあった。

「……面白がっているでしょ?」

咄嗟に声を潜めて、返事をする。

『まさか。ふたりの次回のデートの時は是非私も会ってみたいわ』

「デートじゃないから」

『そう? でもまさかこんな正攻法で切り込んでくると思わなかったわ。一体誰に、なにを見せつけたいのかしらね?』

牽制かしら、なんてよくわからないセリフを呟く。

「なんの話?」

『わざわざ王子様が自分の存在を、お姫様以外の人間に知らしめた理由よ』

……言っている意味がまったく理解できない。

「ただの気まぐれでしょ、そもそもお姫様って誰?」

『沙和に決まってるじゃない』

「……意味がわからないんだけど。なんでそうなるの?」

拗ねるような口調で言い返した後、焦って周囲を見回し会話を早々に切り上げた。
< 72 / 227 >

この作品をシェア

pagetop