俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
本当は私もきちんと提示してもらって詳細を確認すべきなのだろうが、諸々の出来事にすっかり疲れてしまった。


この人は私よりもこの庭園に詳しそうだし、身なりもいい。

それにもし邪な気持ちを持っていたなら、すでに私は襲われているはずだ。


この人に出会いたくてここにやってきたわけではない。

きっと今日限り会うこともないだろう。


それなら、これ以上かかわらず、お互い素知らぬフリをしても問題ない気がする。

きっとこんな時間にここにいる彼にもなんらかの事情があるはずだし、詮索されたくないだろう。

自分の身に起こった出来事を思い出して、そう結論づけた。


「あの……では誤解もとけたようなので失礼します」

小さく独り言のように告げると、男性は渋面を浮かべた。

美形の不機嫌な表情は迫力がある。

「君は……俺になにか言うことはないのか?」


言うこと? 

ああ、それなら……。


「……お身体は大丈夫ですか?」

「は?」

「あの、さっきここに寝ていらっしゃった時、苦しそうな声を出されていたので……」


そう、具合がとても悪そうだった。

もしかしたら今も無理をしているのかもしれない。
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