俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
……どうしてこんな行動をとるの?


きっと数分にも満たない時間だっただろうが、数時間にも感じられた。

長い指が耳に触れるたびに背中に痺れが走り、緊張で呼吸が何度も止まりそうになった。

きっと今、私の両耳は真っ赤に染まっているだろう。


「……俺がピアスを贈ったらつけるか?」

ピアスをつけ終えた彼が抑揚のない声で問いかけてくる。


突然、なにを言い出すの?


「贈られる理由がありません」

間接的に否定のセリフを口にして距離をとろうとすると、右頬に大きな手が添えられた。

「即答だな」

ハハッと社長が小さく声を漏らす。

なにが楽しいのかわからない。


「……あの、どうしてピアスを届けてくださったんですか?」

触れられた手の温もりから気を逸らそうと適当な話題を選んだつもりが、一番聞きにくい質問をぶつけてしまった。

「届けるって言っただろ?」

「でも誰かに託したり、郵送という方法もあったと思うのですが……」

「……俺に届けてほしくなかったと言いたいのか?」


纏う空気が一気に緊張したものに変わり、二重の綺麗な目がすうっと細められた。
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