俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
「そうではなくて……あの、気に入らない人間にわざわざどうして届けてくださったのかと……」

言葉を選ぶのにも疲れてしまい、率直な気持ちを告げる。

どうせ元々いい印象はもたれていないのだから、今さら取り繕ったところでどうしようもない。


「気に入らないって……なんでそんなよくわからない考えになるんだ? 確かに女性とプライベートで接する機会は普段から極力避けてはいるが」

険しい表情のまま返答され、先ほどの由真ちゃんの言葉と週刊誌の記事を思い出す。

胸の中に氷の塊を呑み込んだような冷たさが広がっていく。


気にする必要なんてないのに、どうしてこんなに胸が痛いの?


「好意を持っていない相手にいちいち構うほど、俺は暇じゃない」

妖艶な眼差しを向けられて、胸が苦しくなる。

頬に触れていた手が離れて、そっとほつれた髪が耳にかけられた。

焦らすようにゆっくりと長い指が私の髪を梳く。


「……そんな表情をされると困るな」


至近距離から覗き込まれて、言葉が詰まる。

男性なのに、染みひとつない陶器のように綺麗な肌と長いまつ毛を見つめる。

緊張と羞恥で呼吸がままならなくなり、自分の感情が定まらずうろたえてしまう。


「……ずっと、会いたかったんだ」

吐息混じりの声で言われて息を呑む。


会いたかった? 私に?
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