俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
ちょっと待って、なにを言い出すの?


「気持ちって……まさか、沙和さんの片想いの相手って板谷社長だったんですか!?」

由真ちゃんが若干疑いの眼差しを向けながらも、質問する。

「そうみたいですね、先ほど彼女から聞きました」

違う、と言いかけた私の声を絶妙のタイミングで遮られる。


どうしたらそんな発想が思い浮かぶのか。


「諦めたと仰っていたので失恋されたのかと思ってたんですけど……誤解しあっていたんですね……ああ、それで板谷社長の今日の来訪や過去の噂を気にされてたんですね? 言ってくださったらよかったのに! 私、浦部さんの味方ですよ。もちろんおふたりの仲についても他言しません!」

「へえ……気にしてたのか?」

どこか楽しげな声が頭上から落ちて、肩に置かれた手になぜか力がこもる。

否定したいのに今となっては言い出しにくい。


「ゆ、由真ちゃんは、どうしてここに?」

一刻も早くここから退出してほしくて、板谷社長に邪魔される前に急いで話題を振る。

「沙和さん、机の上にIDパスを置いたままになっていたので……」

後輩がIDパスを右手で掲げて渡してくれた。


東京営業部はあくまでも一般店舗となっているので営業時間が終了すると施錠されてしまう。

そのためIDパスがないと本社ビル内に出入りができなくなる。


東京営業部の担当者にその旨の事情を話して、応接室に入れてもらったらしい。
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