俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
呆れたように言われて、ビクリと肩が揺れる。

相変わらず落ち着いていて、綺麗な面立ちにはなんの動揺も浮かんでいない。


気に入ってる、なんて甘い言葉を使うくせにそんな雰囲気は一切感じられない。

この人の真意がやはりわからない。


ただのその場しのぎ? さっきのやり取りは助けてくれただけなの?


こういう時、大人の女としてはなんと答えたら正解なのだろう。


「……この誤解を利用して婚約者のフリをしろという意味ですか?」

「本当に一筋縄ではいかないな。俺は本物の婚約者でまったく構わないが?」

質問に質問で返してくる、その余裕が憎らしい。

「ふざけないでください」

「本気だ」


どうしてこの人はいつも迷わないの?


綺麗な目に真摯な光が宿る。


「本物の婚約者になればいい。俺を本気で好きになればいい」


そう言ってこめかみに小さなキスを落とす。

心臓が狂ったように動きだして、胸の中心が燃えるように熱くなる。


婚約者? 正気なの? 


戸惑って見上げた目に、甘く相好を崩した姿が映る。


「……本当に本気、なんですか?」


本気でこんなバカげた真似をするつもりなの?
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