トリップコーヒー
「えっ、しってるの!?」


 流石にピンと来た。だってウチは喫茶店経営しているし、学校が休みの時は店の手伝いもしてる。素人に毛が生えた程度だけどコーヒーの知識だってある。


「なら話が速いや! るあっくこーひー・・・・・・・・っていうのを作りたいの!」

 目的は話しちゃいけないんじゃなかったのだろうか

「でも、ルアック……?」

 どこかで聞いたような聞いていないような?もっと別の呼び方が主流だった気が……

「たしか黒猫に豆を食べさせるんだって」
「それコピ・ルアクだ」


 □◆□◆□◆□◆


――――コピ・ルアク、インドネシア発の最高級コーヒー。

 コーヒーの実を食べたジャコウネコのフンから未消化状態のコーヒー豆を採集し、きれいに洗った後、乾燥させてから高温で焙煎して淹れたコーヒーのこと。




「……つまり猫のアレ?」
「サチコさん知らなかったの?」
「いやいやいや!! そんなもの普通飲むかな!?」


 サチコさんは勢いよく黒猫を離す。やっと拘束から解放された黒猫は脱兎のごとく店の外に消えていった。今考えてみれば黒猫ってジャコウネコの事だったのか、まぁ猫と黒以外全部違う気がするんだけど。


「……ま、飲むのはあの人だし、いっか!」
「あの人?」
「んえ!? 何でもないよ!! 言ったら今度こそ捕まっちゃうし!!」


 もうほとんどバレてる気がする。コピ・ルアクを飲ませるなんて余程の大切な人だろうし、一説には健康に良いっていうし。


「恋人さんか親御さんなんだろうな……」
「ブッブー不正解!!」
「それ言って大丈夫?」


 あ、やばいって感じに口を押えるサチコさん。
 目的とかバレてる時点で捕まらないなんて、やっぱり嘘つきなのかな。でも、なんだが嘘ついているようには見えないし、なんだろう。助けなきゃいけないと思っちゃうんだよな。


「まぁいいや、コピ・ルアクでいいんだよね」
「え、いいの!?」
「その代わり二度と猫をいじめないでね」
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