さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜
⚖️ Last Chapter
タクシーから飛び出たわたしは、どう見ても場末にある半地下へ駆けて行き、看板も出ていない店の怪しげなドアを勢いよく開けた。
とたんに、薄暗いオレンジの間接照明に照らされ、ダークブラウンの年季の入った調度品が目に入ってくる。
「……翔くん、茂樹になにがあったっていうの⁉︎」
わたしはきょろきょろと、店の中を見渡した。
「あっ、光彩先生っ!こちらですっ‼︎」
店の奥から翔くんの大きな声がした。
カウンターとは反対側のテーブル席だ。
そこへ、わたしはあわてて駆け寄った。
すると、テーブルを挟んだソファの上に、茂樹が足を投げ出して横たわっているのが見えた。
血色を失った真っ青な顔で目を瞑り、力なくぐったりとしている。
「ちょ、ちょっと茂樹……
いったい、どうしちゃったのよっ⁉︎」