さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜
⚖️ Chapter 5
「……着ていく服がない」
全開にしたクローゼットを見渡して、わたしはため息を吐いた。
思えば職場と家との往復の毎日で、スーツor部屋着という両極端なワードローブになっていた。
しかも、弁護士という職業柄、どうしてもかちっとしたテーラードジャケットの動きやすいパンツスーツばかりになってしまう。
(弁護士は案外「動く」仕事なのだ)
そして部屋着はというと、ユニクロやGAPのスウェットで、あまりにもラフ過ぎる……
——お互い忙しくて、いっしょにいられるのはたぶん二、三時間が関の山だろうけど、一応「デート」だもんなぁ……
それに、平日の退勤後ならまだしも一応休業日の土曜日の夜である。
(もちろん、休日出勤ししなきゃなんないけどね)
——仕方ないな。
菅野先生との待ち合わせの前に、買いに行くか。
便利なことに、職場の進藤法律事務所があるベリーヒルズビレッジ内には、ショッピングモールのエリアがある。
どうせ 「時短」のため、食事も同じベリーヒルズビレッジの中にあるホテルだと思うしね。
(とは言え、ミシュラン星がきらきらと輝く高級店がずらりと軒を連ねているけれども)
せっかくのこの機会だ。
ひさびさに、プロの人にコーディネイトしてもらうのもいいかもしれないな。