一樹君の恋人は天使なんです
「お前見ていると、俺は幸せな気持ちになれる事に気付いた。見ているだけで、幸せな気持ちになれる。…こんな気持ち、ずっと忘れていたよ…」
「…何を言い出すのですか? …そんなセリフって…女性の方に言うものだと、思われます…」
「そだろうな。…でも幸せだと思う気持ちは。男も女も関係ないって、俺は思っている。…お前が無理すると俺は辛くなるんだ。だから、もっと自分を大切にしてほしい」
いつになく一樹の声が優しく感じて、悠は胸がいっぱいになった。
私…貴方を追いかけて来たの…貴方に会いたくて、ここに来たの…。
心の中で悠はそう呟いた。
決して言葉にはしない…してはいけない…だけど、思うだけなら許してもらえるよね?
「有難うございます。…ご心配をおかけして、申し訳ございません…」
小さく笑って悠は一樹を見つめた。
「もう大丈夫です。今日は1人で帰れます。本当に、心配しないで下さい」
そう答える悠は、先ほどよりは顔色が良くなっていた。
結局、悠は1人で帰ってしまった。
一樹も今日は歩いてきていたため、駅前でタクシーを拾うため歩いて行った。
歩いている途中。
一樹は悠を抱きしめてしまったときのことを、何度も思い出していた。
とても華奢で、男性には思えなかった。
どこか悲しそうな目をしている悠は、何かを内に秘めているように見える。
そして気になるのが胸の辺りに見えた黒い影だった。
一樹は黒い影に強い印象があった。
それは…