一樹君の恋人は天使なんです
今から10年前の事。
一樹が大学生の時だった。
一樹にも3年ほど交際していた彼女がいた。
同じ法学部の女子で、彼女は真逆の検事になりたいと言っていた。
弁護士と検事という真逆の道を目指す2人だったが、とてもフィーリングが合い一緒にいて喧嘩することもなく楽しい日々を過ごしていた。
お互い恋している事に気付いたのは出会ってから半年後。
彼女のうから一樹に交際の申し込みがあった。
一樹はぶっきらぼうで、愛想もなく、女は面倒だと言っていたが素直な彼女に押されて交際をスタートした。
大きな喧嘩もなく、ちょっとした言い合いはあってもすぐに仲直りしてとても仲が良い2人を周りは羨ましがっていた。
順調に進んで大学4年生の夏だった。
通学途中で彼女は事故に遭い突然亡くなってしまった。
学校に来て、生徒達がざわついていて、彼女が亡くなった事を知らされた一樹は驚きのあまり信じられなかった。
急ぎ足で聞かされた病院へ行ってみると、彼女の両親がいて号泣していた。
両親公認で交際していた一樹は、彼女の両親から、酷いけがもないのに打ちどころが悪かっただけで亡くなってしまったと聞かされた。
その時、一樹は思い出した。
前日に彼女と別れる前に、彼女の背後に真っ黒な影を見たことを。
とても濃い黒で見ているとゾッとするくらいだった。
そんな影を見たのは、一樹の祖母が亡くなった時にあったくらいで。
でも、その黒い影と彼女の背後の影を重ねて考えなかった一樹。
しかし思い返せば、あの真っ黒な影は、もしかしたら彼女の死を教えていたのかもしれないと一樹は思った。