一樹君の恋人は天使なんです
お昼になり、一樹は悠のところにやって来た。
「おい、ちょっと話がある。俺に付き合ってくれ」
ちょっと怖い目をしている一樹に、悠は驚いた目を向けた。
悠はそのまま駅前のカフェに連れて来られた。
ランチメニューも豊富で、味も良いカフェ。
おしゃれな雰囲気で、カップルで来ている人が多くいる。
窓際に座った一樹と悠。
一樹はランチを注文した。
悠も軽いパン系のランチを注文した。
「あのさ。誤解するなよ」
「誤解って、何をですか? 」
一樹はちょっと恥ずかしそうに視線を反らした。
「俺は…誰とも付き合っていないから」
ああ…京香さんの事を言っているのか。
わざわざ言い訳をするためにランチに誘ったのだろうか?
「その事でしたら、自分には関係ないと思われ。…わざわざ、お話して頂かなくてもいいわけで…」
「関係ないのか? お前には」
「はい…自分はただの社員ですから…」
「じゃあなんで、そんなに傷ついた目をしているんだよ」
「傷ついていなんかないです。…そんな理由、どこにもないわけで…」
じっと見つめて来る一樹を感じて、悠はなんとなく俯いた。
「あいつがお前に何を話したのか、俺には分らんが。鵜呑みにしないでくれ。あいつは、意味のない嘘をつく奴だから」
「意味のない嘘? 」
「ああ。…人は嘘をつくとき、何かの理由があって嘘をつくものだが。世の中には、変わっているというか。ただ単に自分に注意を向けたいのか、意味がない嘘をついて満足している奴がいるんだ。あいつは、そうゆう奴なんだ。アメリカでも、意味のない嘘をついて自分を大きく見せていた。弁護士になる目的があるから、俺は事務員として雇っているだけで、それ以上の感情を抱いたことはない」
意味のない嘘なんて…分からない…。
でもどうして? そんなに真剣な目をして見て来るの?
悠は胸がキュンとなった。