一樹君の恋人は天使なんです


 急激に仕事の依頼が増えてきたのは、事務所を始めて半年経過した頃。

 
 そしてその頃に、平凡な法律事務所に目を疑うとても綺麗な新入社員が入ってきた。


 その者は男性。

 身長は175cm前後のスラッとしたタイプ。

 とても綺麗な顔立ちで、メガネをかけているが、どこか悲しげな目をしている。

 綺麗な金色の髪をしていて、みんながハーフだと思うほどで、女性が羨むくらいの白い肌をしている。

 本人曰く「アメリカ人と日本人のハーフです」と話している。

 紺色のスーツに身を包んで、おしゃれなストライプのネクタイがとても似合っている。

 名前は末森悠(すえもり・ゆう)。
 
 年齢は25歳。

 口数は少ないが、仕事は丁寧できちんとこなしてくれる。

 頼まれれば残業もしてくれて、とてもできる新入社員である。


 悠が来たのは、桜が舞い散る春だった。


 
 新緑の輝く5月になる頃には、悠はすっかり事務所になじんで、周りとも仲良くなっていた悠。

 誰にでも優しい笑顔を向けてくれる悠。

 しかし、お昼を食べるときはどこかで1人で食べていることが多く、早めに帰ってきて自分の席で昼寝をしていることも多くある。


 時おり、ちょと天然ボケなのか、反応が遅い時もあるが、そこか可愛いと言われている。


 

「末森さん、悪いけどこの書類を所長に届けてもらえる? 」

 向かい側の女子社員・長谷田恵子(はせだ・けいこ)が言った。

「はい、分かりました」


 素直に引き受ける悠。



 
 所長室は、事務所の上の3階にある。

 階段を上って3階まで行く悠。



 しっかりしたドアに所長室とプレートが貼ってある。


 悠はちょっと深呼吸して、ドアをノックした。


 コンコン。

 ノックをすると

「はい…」

 中からちょっと低くて渋めの声がした。

「あ、すみません。書類を届けに来ました、入っても宜しいでしょうか? 」

 ちょっと緊張した声で尋ねる悠。

「ああ、いいぞ」

 不愛想な返事か聞こえた。

「失礼します」


 少し緊張した面持ちで、悠は所長室へ入った。

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