一樹君の恋人は天使なんです
「末森君、大丈夫か? 」
恭太が心配になり悠に声をかけてきた。
「大丈夫ですよ」
いつものように笑って答える悠。
しかし、顔色がちょっと青かった。
「駒枝さん、結構しつこいから。はっきり断ったほうがいいぜ。言いなりになっていると、どんどんエスカレートしてくるからさっ」
「はい、分かりました。有難うございます」
それから定時が過ぎて。
「末森君。ごめんだけど、これお願いできる? 私、今日はどうしても用があって残業できないの」
京香が自分の仕事を悠に押し付けてきた。
「判りました、やっておきます」
快く引き受ける悠。
「まったくあの子は、相変わらず自分勝手だねぇ」
美恵がやった来た。
「悠君。引きうけることはないよ、自分の仕事は自分でやる。できなかったら、休み返上してでも仕事するのが当然なんだから」
「いえ、大丈夫ですよこのくらいなら」
「全く、あんたは優しすぎるくらいね。私もちょっと手伝うわ」
京香が押し付けた仕事を美恵が少し持って行ってくれた。
とりあえず量は減ったものの、すぐには終わらない寮で。
悠はとりあえず仕事を続けた。
美恵は19時前には帰ったが、悠はまだ終わらずそのまま残っていた。
京香の残した仕事の量は結構あり。
悠は20時過ぎまで仕事をしていた。
ようやく仕事が終わり、悠はやっと帰ることが出来た。
事務所の鍵を閉めて、ビルの下に降りてきた悠。
一息ついた悠は、ちょっと頭がクラっとして倒れそうになった。
すると…
「大丈夫か? 」
と、誰かが抱きとめてくれた。
ぼんやりとした視界に一樹の姿が映り、悠はハッとなった。
「すみません、大丈夫です…」
と、答えるものの力ない声の悠。