一樹君の恋人は天使なんです
「お前、頑張りすぎているぞ。ちょっと自分の体大切にしろ」

「はい…」


 虚ろな目で答える悠を見て、一樹はグイッと悠の腕を引っ張った。


「送って行く。そんなフラフラしてたんじゃ、危ない」

「いえ…大丈夫です…」

 
 答える悠の声に力がないまま、一樹に引っ張られ車まで連れていかれた。

 
 一樹の車はシンプルなシルバー乗用車。

 
 助手席に悠を乗せて、シートベルトを着けて。

 一樹は運転席に乗り込んだ。


「家はどこだ? 」

「ここから北に行ったところの、住宅地です…」

 半分眠そうな顔をして悠は答えた。

「判った」

 
 車を走らせて行く一樹。

 とりあえず言われた通り、一樹は北へ向かった。



 住宅地が近づいていてきて、マンションやアパートも見えてきた。


「おい、この先はどこだ? 」

 
 一樹が尋ねるが。
 
 悠から返事がない。


「おい、聞いているか? 」

 と、隣を見ると悠は寝てしまっていた。


 

 一樹は路肩に車を止めた。


「おい、起きろ」


 肩をゆすっても悠は目を覚まさない。


 ぐっすり眠っている悠を見て、一樹はどうしようか迷った。


「まいったなぁ…」

 住宅地を見渡して一樹はちょっと考え込んだ。


「…仕方ないな…」


 再び車を走らせた一樹。




 目を覚まさない悠を乗せて、一樹は自分の家に向かった。


 一樹の家は悠の言っていた住宅地より東に向かった場所にある、ちょっと高級そうなマンションの7階。

 最上階で4LDK。

 南向きの日当たりのよい部屋で、リビングもキッチンも広い。

 一樹が1人で暮らすには部屋数も多く、ちょっと贅沢に感じる。



 とりあえず悠をベッドに寝かせた一樹。


 広めのシングルベッドに寝ている一樹。

 シックなグレーのベッドカバーに、黒系の枕カバー。

 広々とした部屋にベッドとクローゼットだけ。


 脱がせたジャケットをハンガーにかけ、壁にかけて一樹は眠っている悠を見た。

< 22 / 104 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop