一樹君の恋人は天使なんです
スヤスヤと眠っている悠は、まるで天使のような寝顔でとても可愛い。
眼鏡を外した悠はとても綺麗な顔をしている。
サラサラとした金色の髪…雪のような透明感のある白い肌…。
見ている一樹は悠に吸い込まれそうになるらい見とれてしまった。
とりあえず目が覚めるまで待つ事にして、一樹はお風呂に向かった。
帰ってからお風呂に入る時間が、一樹には一番癒される時間になっている。
頭からシャワーを浴びて。
一通り洗って。
湯船につかると、フーッと一息つく一樹。
のんびり湯船につかりながら、一樹は悠の寝顔を思い出していた。
普段の悠は眼鏡をかけて、ちょっと生真面目そうに見えるが、話し言葉がちょっと変わっていて日本語の使い方も変わっている。
人の分まで仕事をして、いつも遅く帰っても遅刻することもなくいつも15分前には出勤している悠。
(…初めまして。末森悠と申します。あの、このようなお仕事は初めてなのですが。雇ってもらえますか? )
黒系のスーツ姿がの悠が、初めて一樹の事務所に面接に来た時だった。
まだ幼い面影がある悠は、スーツを着ているのがちょっと浮いて見えた。
履歴書を見ても大学まで卒業していて、学校は外国の学校名が書かれていた。
(すみません。日本人とアメリカ人のハーフなんです)
そう答えた悠は、どこか悲しい目をしていた。
一樹はちょっと迷っていたが、一緒に事務所を立ち上げてきた事務員の榊美恵(さかき・みえ)47歳が「いい子じゃない、私が育てるわ」と言って、雇うこと賛成してくれた。
美恵は結婚して、もう子供は大学を卒業して社会人になっていて子育ても終わり、夫婦でのんびり暮らしているとても気さくな女性。
事務の基本から法律関係まで、悠に何もかも教えてくれていた。
一樹が迷ったのは、悠が何も経験がないから…ではなく…
「…あの時、俺は怖かったんだ。…こんな気持ちになるのが…」
フッとため息をついて、一樹は湯船を出て、お風呂から出た。