一樹君の恋人は天使なんです

「…嫌いになってよ…」

 悠がボソッと言った。

 ん? と、一樹は悠を見た。


「…男の真似なんかして…可愛くないし…これで、嫌いになってよ…」


 ギュッと唇を噛んだ悠は、どこか悲しげな目をしていた。

 そんな悠を見ていると、一樹は胸がキュンとなって痛みを感じた…。


「なんで俺に嫌われようとするんだ? 」

「…酷いことしたの…貴方が、一番悲しむ事をしたから…」


 何を言っているのか一樹には分らず、ただ黙って悠を見ていた。


 すると…

 ゆうの後ろにポワッっと何かが見えてきた。


 一樹は何だろう? と目を凝らした。


 ポワっとした中から、救急車の中から運ばれてくる一人の女性が見えた。

 医師たちが急いで運んで、処置をしてたが女性は昏睡状態で危篤に陥っていた。


「…水穂子(みほこ)…」

 聞き取れないほどの声で、一樹が女性の名前を呟いた。


 集中治療室に運ばれた女性の枕元に張ってあるネームプレートには、本山美穂子(もとやま・みほこ)と書いてある。


 今にも死にそうな水穂子のもとに、スーッと降りてきた綺麗な女性が現れた。

 金色の髪のスッと背の高い女性は、天使のように白装束に身を包んでいる。

 水穂子に手をかざして金色の光で包み込んだ。


 すると水穂子は顔色が良くなり目を覚ました。


 水穂子は女性に何か言っている。

 女性は首を振っている。


 水穂子は何かを女性に言った。

 そして…また顔色が真っ青になりぐったりとなった。

 傍に居た女性は駆け出して、その場からいなくなった。

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