一樹君の恋人は天使なんです


 本音でって…
 私がどうして、男のふりしていたかって聞かれるわけで…。
 ごまかしたいけど、どうごまかしていいのか分からないわけで。
 さっきは勢いで、自分から見せちゃった事から…今更、ごまかせないと思われ…。


「お前とは本音で向き合いたいって、思うから。話せることだけで構わないから、話してもらえるか? 」

 
 どうしようって言っても、ここまで来たらどうにもならないわけで。

 ちゃんと本当の事を話して嫌われたほうが、いいと思われ…。


「別にいいと思われます…。でも…いいんですか? ここで本音で話しても…」

「俺の家だ、問題ない」

「でも…同棲しているのですよね? 」


 珈琲を飲みかけていた一樹は動きを止めた。


「はぁ? 同棲って、誰とだ? 」

「京香さんと…」

「ん? あいつ、そんな事言ってたのか? 」

「はい、週末はお互いの家に泊りに行って同棲してると言ってました」


 カップを置いて、一樹は大きくため息をついた。

「この服も…下着も…京香さんの物ではないかと思われ…」

「全く違う。それは妹のもんだ。俺の3つ下の妹。よくここに来るんだ。最近は忙しくてずっと来ていないが、気まぐれに来るから。いつ来てもいいように、着替えも置いてある。真新しい下着があるのも、妹が買って置いてあるだけだ」


 じーっと悠は一樹を見つめた。


「ん? その顔は疑っているのか? 」

「いえ…」

「この家のどこに、同棲している気配があるっていうんだ? 」


 言われて、悠は部屋を見渡した。

 どこを見ても男の気配しかない。

 女性ものが用意されたが、すべて真新しい。


 それに…

 ベッドには枕は1つだけで、ベッドカバーも男性用だった。

 
 京香がもし、同棲しているなら、きっともっと派手なものが置いてあるだろう…。


 改めて冷静に見渡すと、一樹の言うことが本当だと悠は理解できた。


「判ってくれたか? 」

「はい…」

「とんでもない嘘をつく奴だ。全く…」


 なんとなく悠はホッとした。
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