一樹君の恋人は天使なんです
それからしばらくして。
悠が面接に来た時、一樹はあの天使のような女性に会った時のようにドキッと胸が鳴った。
ギュッと悠を抱きしめると、一樹の目も潤んだ。
「…せっかく来てくれたんじゃないか。この世界、楽しめよ。…自分に嘘つかないで、楽しめばいいじゃないか」
楽しむって…考えたことなかった。
ずっと自分が悪いって思ってばかりで、楽しんではいけないって思っていた。
でも…楽しんでもいいのかな?
この人と一緒に…。
悠はそっと、一樹を見上げた。
目にいっぱいの涙をためている悠…。
「俺と一緒に、楽しもう」
なんとなく、まだどこかに罪悪感を感じている悠だが、とりあえず頷いてみた。
「よし! 」
クシャっと、悠の髪に触れると一樹は優しく微笑んだ
「じゃあ、とりあえず。今日は俺に付き合ってくれ」
「え? 」
「だから、デートしてって事」
「デート? 」
「そっ、せっかくおしゃれしてんだぜ。出かけなくちゃ、勿体ないだろう? 」
デートって、それって恋人同士がする事じゃ…。
まだ「好きだ」って言ってもらってない。
キスされたけど…。
ちょっと赤くなって俯いた悠。