一樹君の恋人は天使なんです
翌日。
宗田法律事務所は相変わらず忙しそうにバタバタしている。
悠は男性の恰好のまま仕事に来ている。
今のところ一樹だけしか悠が女性であることは知らない。
京香は相変わらず一樹に密着して行き、悠にも甘えてべったりくっついてくる。
いつもと変わらないように仕事をしている悠。
だが…
「悠君。なんだか今日は、いつもと違うわね」
美恵が不意に声をかけてきた。
「え? そうですか? 」
いつもと変わらない笑顔を向ける悠を、美恵はじっと見つめた。
「うーん…。なんか、悠君ってすごく綺麗よね。前から思ってたけど、女性も顔負けするくらいだもん」
「そんな事ありませんよ」
「でも今日は、また一段と綺麗だから驚いたの。ねぇ、もしかして恋でもしたの? 」
「そ、そんな事ありませんよ」
愛想笑いを浮かべる悠を、美恵はじーっと見つめ続けていた。
「末森君。悪いけど、これ所長に持って行ってくれないか? 」
男性社員が悠に書類を持ってきた。
「はい、分かりました」
快く引き受けて、悠は所長室へ向かった。
すると、出てゆく悠を見て京香がニヤリと笑って事務所を出て行った。