一樹君の恋人は天使なんです

 階段で所長室へ向かう悠。


 京香はエレベーターで先に所長室へ向かった。



 京香が先に来ていることを知らず、所長室へやって来た悠。


 コンコン。

「所長、失礼します」


 声をかけてドアを開けて所長室へ入った悠。


 ふと入った瞬間…

「えっ? …」


 悠は目を疑う光景を目にした。


 バサッ…。

 持っていた書類を落としてしまった悠。

 悠の目に入った光景は。


 京香と一樹がキスをしている光景だった。


 窓際に座る一樹に覆いかぶさるように、京香がキスをしている。

 唇を吸い上げて深くキスをしている京香。


 悠は驚いて茫然としてしまった悠。


 ん? と、京香は悠に気づいて目を向けた。


 目と目が合うと、悠はハッとなった。

 落とした書類を慌てて拾い、悠はテーブルの上に置いた。


「ご、ごめんなさい…」

 逃げるように悠は所長室を出て行った。


 京香はニヤリと笑って、一樹から離れた。


「…ん…」


 一樹が目を開けた。

 どうやら、転寝していたようで、ちょっとぼんやと目を凝らした。


「所長、仕事中に寝てたんですか? 」

 そぐ傍で声がして、一樹は驚いて京香を見た。

 怪しく笑う京香。


「お疲れなんですね、所長」


 言いながら、テーブルの上に悠が置いて行った書類を持って来てデスクの上に置くと、京香はまたニヤッと笑った。


「末森君が持ってきたんですよ。でも、所長が寝ていたので、慌てて戻って行ったようですよ」


 ん? なんか変だ…。

 京香の言葉に一樹は違和感を感じた。


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