一樹君の恋人は天使なんです


 夕方。

 今日は珍しく悠は定時で帰る事にした。

 仕事は残っているが、京香と一樹のあのシーンを見てしまい頭から離れないため、仕事が手につかなくなり帰る事にしたのだ。


 事務所を出て階段を降りて来ると、悠はフッとため息をついて歩き出した。


「おい、待てよ」

 後ろから一樹がやってきて、悠に声をかけて来た。

 一樹の声を聞くと、悠はムッとした顔になった。


「おい、待てって」

 
 いつものように声をかけて来る一樹に、悠はちょっとイラっとした。


「今日は定時で帰れたのか? 俺も今から帰るんだ。どうだ? 夕飯一緒に食べないか? 」

「結構です! 」

「ん? 」

 
 ちょっと怒っている様子の悠に、一樹はどうしたものかと首をかしげた。


 ツカツカと先に歩いて行く悠。

「おい、どうしたんだ? 」


 声をかけても悠は返事もしないで、ツカツカと先に歩いて行く。


「ちょっと、待てよ。何を怒っているんだ? 」

 
 さっぱりわからない一樹。


 ピタッと足を止めて、悠は一樹に振り向いた。


 一樹も立ち止まって悠を見た。


 怒った顔で一樹を見ている悠。

 一樹は何を怒られているのか分からない顔をしている。


「…嫌いよ…」

「え? 」

「あんたなんか、大嫌い! 」

「え???? 」


 悠はそのまま走り去った。


 一樹は突然「大嫌い」と言われて驚き、茫然と佇んだ。


「大嫌い? なんでだ? 」


 一樹はショックでただ茫然と佇んでいた。

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