一樹君の恋人は天使なんです

「何している! 」

 やって来たのは一樹だった。


「所長? 今日は外出してたんじゃないんですか? 」


 京香はコロッと態度を変えて、一樹に笑いかけた。


 そんな京香を無視して、一樹は悠に歩み寄った。


 真っ青な顔をして、悠はちょっと胸を押さえていた。


「大丈夫か? 」


 悠は頷いた。

 しかし、顔色が真っ青で額には冷や汗が出ていた。


「もういい、今日はこのまま帰って休むんだ。仕事の続きは、明日やればいいから」


 小さく頷いて、悠はそのまま資料室を出て行った。


「あら、行っちゃたの? つまんないなぁ、末森君から誘ってきたのに」

「お前、末森に何か言ったのか? 」

「え? 何かって? 」

「こんな場所に呼び出して、何していたんだ? 」

「何していたって、末森君が私にキスしたいって迫ってきたから断っていただけよ」


 違うだろう? 
 悠は真っ青になっていた。
 迫ったのは京香のほうだ。

 一樹は直感でそう感じた。


「私には所長がいるから、断ったわよ」


 ニコッと笑う京香。


 一樹は呆れて、黙ったままその場を去った。






 悠はあのまま早退した。

 京香に迫られたことが、けっこうショックだったようだ。

 顔色も悪く目も虚ろだった。



 一樹は残務をこなしながら悠を心配していた。


 悠に連絡しようとしたが、携帯電話を持っていない悠。

 家まで行こうかと思っていたが、残務の量が多く終わったのが22時を回っていた事から今日はやめておこうと一樹は思った。




 翌日。

 悠は仕事を休んでいた。

 高熱が出ているようで休むと連絡が入ったようだ。


 一樹は心配だったが、予定が立て込んでいてい様子を見に行く子が出来ないままだった。


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