一樹君の恋人は天使なんです
結局、カップを洗わないまま所長室を後にして戻ってきた悠。
仕事に戻った悠は、なんとなく気持ちが暖かくなったのを感じていた。
胸がドキドキしている…。
優しい笑顔を向けてくれた…。
やっぱり優しい人なんだね…。
そう思いながら仕事を続けていた悠。
この日も結局残業で、悠は20時ころまで残っていた。
悠の他にも男性事務員が2人ほど残業をしていた。
「お先に失礼します」
悠は挨拶をして事務所を後にした。
帰り道。
遅くなった悠は、夕食をコンビニで買おうと歩いていた。
駅前のレストラン街を悠が通りかかったとき、偶然にも一樹が1階にあるファミレスで1人で食事をしていた。
窓際に座っていた一樹は歩いて来る悠を目にした。
ちょっと疲れた顔をして歩いて来る悠。
「おい」
太い声で呼ばれて、悠ははっとして立ち止まった。
「し、所長…。お疲れ様です」
「今まで残業か? 」
「はい…」
ちょっと疲れたような声で返事をする悠の手を、ガシっと一樹は掴んだ。
突然、手を掴まれて悠は驚いて一樹を見た。
「夕飯まだだろう? 一緒に来い」
「あ…あの…」
戸惑っている悠を気に留めないまま、一樹は歩き出した。
そのままファミレスに悠を連れて来た一樹。
悠は戸惑っていた。
「好きなもの頼めよ」
とメニューを渡してくれた一樹。
悠はメニューを見ているがどれも美味しそうに見える。
結構迷った悠だが、頼んだのはシンプルなミートスパだった。
ちょっとぎこちなく、フォークでパスタを巻いて食べている悠。
よく噛んでゆっくり食べている悠を見ながら、一樹もゆっくりと食べていた。