一樹君の恋人は天使なんです
 病院の帰り。

 一樹はどうしても悠のことが気になり、家に寄ってみた。


 大嫌いと言われて追い出されてしまったことがあり、ちょっと緊張している一樹。


 深呼吸をしてチャイムを鳴らす一樹。


 チャイムを鳴らして…しばらくすると…。



 カチャッと玄関の鍵が開いた。


 ゆっくりとドアが開いて、パジャマ姿の悠が顔を出した。


 顔色が悪く、ちょっと痩せたようだ。


 そんな悠を見ると、一樹は胸がキュンとなった。



 悠は一樹を見ると、悲しげに目を伏せた。


「大丈夫か? 召しちゃんと食っているのか? 」

 尋ねても、悠は何も答えない。


「とりあえず、中に入れてもらえないか? 」


 悠は俯いたま、ドアを開けて一樹を中に招いた。




 
 リビングまで歩いてくる悠は、足元がフラフラして倒れそうになり、一樹がそっと支えた。


「お前。随分痩せたんじゃないか? ちゃんと食ってねぇだろう? 」

「…気にしないで…下さい…」

 答える声にも力がない悠。


 一樹はひょいと悠を抱き抱え、寝室に運んだ。


 寝室の悠のベッドは女性らしくピンク系で統一されている。

 
 ベッドに寝かされると、悠はぐったりとなった。


「何も考えなくていい。ゆっくり寝ていろ」


 そう言って、一樹は優しく悠の頭を撫でた。

「…優しく…しないで下さい…自分なんかに…」

 強がりを言う悠だが、あまり力もなく、呼吸がちょっと荒かった。
  

「どうするかは、俺の自由だ。お前に拒否されても、俺は往生際が悪いからあきらめられねぇんだ。こんなに、人を好きになったのは。もう…10年なかったからな…」


 ふと、一樹の目が悲しげに曇った。

 そんな一樹を見ると、悠は胸が痛んだ。


「とりあえず寝ていろ。傍に居るから」

 優しい笑みを向けてくれる一樹に、悠は視線をそらしたまま何も言わなかった。

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