一樹君の恋人は天使なんです
「俺…。お前に「大嫌い」って言われた時。すげぇショックだった。でもさっ、決めたんだ」

 
 一樹は悠の傍に行き、ギュッと抱き抱きしめた。


 突然抱きしめられ、驚いた悠だが。

 一樹の腕の中はとても暖かくて…安心できた。


「俺、お前に嫌われてもずっと好きでいる。その自由は許してほしい」

 
 今好きって言った?
 初めて好きって言ってくれた?

 
 初めて好きと言われ、悠は胸が熱くなり目が潤んできた。

「どうしたんだ? 俺、何か嫌な事言ったか? 」

 
 涙ぐむ悠を見て、一樹はちょっと動揺していた。


「…初めて、好きって言ってくれた」

「あ? そうだっけ? 」

「何も言われないまま、キスされて…どうゆうつもりだったのかって思っていて…」

「ごめん…気持ちだけが先走りしていた」 


「でも…京香さんと…キスしていたし…」

「はぁ? いつ? 」


 
 悠はフイッと俯いた。


 そんな悠を見て、一樹は悠に「あんたなんか大嫌い」と言われた日を思い出した。


 あの日は寝不足からうっかり寝てしまった。

 目が覚めると京香がいて「末森君が書類を届けてくれた」と言っていた。

 あの時の京香は妙に嬉しそうで。

 その後、悠がキスを迫ってきたと嘘をついていた。


「そうか…あの日か。あいつ、そんな事を…。全くの誤解だぞ。あの時、俺、寝不足で転寝していたんだ。その時、京香が来ていたんだ」


 ちょっと拗ねた目で、悠は一樹を見た。
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