一樹君の恋人は天使なんです
「本当だ、信じてくれ」


 悠はちょっと悲しそうに目を伏せた。


 ため息をついた一樹は、ふと、テーブルの上に置いてある薬袋が目に入った。

 解熱の薬のようだが、名前を見ると。

 末森悠里(ゆうり)と書いてあった。


「悠里? …お前、本当の名前、悠里っていうのか? 」


 悠はこくりと頷いた。

「悠里って、お前にピッタリな可愛い名前じゃないか」


 ギュッと悠を抱きしめると、一樹は悠の頭をそっと撫でた。


「悠里。…ごめんな、傷つけて。こんな気持ち、10年ぶりで舞い上がっていたんだ。お前とキスしたとき、最高に嬉しくてさぁ。でも、ちゃんと言うべきだった。ごめん…」

「…いいんです。自分は、相応しくないと思われますから」

「ばーか。お前が相応しくないなんて、誰が思うんだ? 」

「だって自分は…こんなんだし…お金だってないし…。京香さんは、お金お持ちだと思われ。容姿も綺麗なわけで…」


 まるで子供が拗ねているような悠に、一樹は嬉しさを感じた。


 悠の額に額をくっつけ、そっと微笑む一樹。

「俺はお前が好きなんだ。容姿やお金なんて、興味はない。俺が欲しいのは、通い合うハートだけだ」

「ハート? 」

「ああ、ハートに感じる思いだけだ」


 間近で見つめれ、悠は赤くなった。

 

「悠里…」

 優しく名前を呼ばれると、悠の胸がキュンとなった。


 ゆっくりと一樹を見つめる悠…。

 一樹もそっと悠を見つめる…。


 お互いが見つめ合う…そして…

 自然と引き寄せられ、唇が重なった…。



 ぎこちない一樹のキス。

 唇はちょっと緊張して震えている感じがした。

 でもとても優しくて暖かいエネルギーが伝わって来る。


 悠の唇は柔らかくて、重なるだけで安心する。

 優しいエネルギーが伝わってきて。 触れるキスから激しいキスになってゆく。

 どちらからともなく求め合い。

 離れることを惜しむくらい…。

 
 2人の激しく求めあうキスの音が響いていた…。

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