一樹君の恋人は天使なんです
「朝ご飯、作りますね」
と、悠が言った。
「いや、俺が作るよ」
と、一樹が言った。
「でも、作ってもらってばかりじゃ悪いと思われるので…」
一樹はヌーッと悠に顔を近づけた。
「なぁ。お前って、家事出来ないんだろう? 」
「え? な、なんで? 」
「だって、調理器具使ってないようだったし。お前、不器用じゃん。冷蔵庫の中だって、バラバラだったからさっ」
「…だって…」
恥ずかしそうに悠は俯いた。
「別にいいじゃないか。家事ができることが、正解じゃないし。できることをやれば、それでいいじゃないか。得意なことを伸ばせばいいって、俺は思っているから」
「…はい…」
なんとなく悠は照れてしまった。
結局一樹が朝ご飯を作ってくれた。
悠の家にはお米がなくパンしかなかったが、卵を使ってフレンチトーストを作ってくれた一樹。
ふんわりと柔らかく、とても美味しいフレンチトーストに悠はちょっと感動していた。
フレンチトーストと珈琲。
シンプルなモーニングのような朝ご飯だが、とても美味しくて。
一樹も悠も幸せなひと時を過ごした。