一樹君の恋人は天使なんです

 過激で露骨な場面に、悠は一瞬、頭がクラっとした。

 そんな写真を平気で見せて回れることにも飽きれるが、見たくない写真だった。

 なんでこんなのを見せるのだろう…。

 なんとなく悠の中で悲しい気持ちが込みあがってきて、ちょっとだけ目が潤んだ。


「ちょっと京香さん。無理矢理みせるものじゃないわ、やめなさいよ」

 見かねて美恵が言ってきた。


「え? だって、所長と私が愛し合っているのは事実よ。別にいいじゃない」

「そうゆう事じゃないでしょう? そんな写真、人に見せて回る者じゃないって言いたいの」

「いいじゃない、事実なんだから」


 ズキン…。

 悠の胸に痛みが走った。


 ギュッと胸を押さえ、悠は俯いた。


「悠君? どうかしたの? 」

 様子がおかしいと思い、美恵が悠の傍にやって来た。


「いえ…なんでもありません…」

「顔色真青よ、大丈夫? 」

「はい…大丈夫です…」


 そう答える悠だが、額には冷や汗が滲んでいた。


「あれ? 末森君、もしかして所長と私の愛に興奮したの? 」

 笑っている京香を、美恵は睨みつけた。


「ちょっと、いい加減にしなさいよ! 」

「なに? おばさん根性で、やきもち? 」


 美恵は呆れてしまい返す言葉が見つからなかった。



「どうしたんだ? 」


 一樹がやって来た。


「あら、所長。私に会いに来てくれたの? 」

 京香がすり寄ってゆくが、一樹は知らん顔していた。


 京香に目もくれず、一樹は悠に歩み寄って行った。

 と…


 ドサッと、悠が倒れこんでしまった。


「悠君? しっかりして」


 血相を変えて一樹は悠に駆け寄った。


 額に冷や汗をにじませて、ぐったりしている悠。


 一樹は悠を抱きかかえた。
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