一樹君の恋人は天使なんです

 一樹は悠を家に送り届けた。


「おとなしく休んでいろ、終わったら、また来るから」

「…はい…」


 不安そうに答える悠を見ると、一樹の胸もチクりと痛んだ。


「お前、病気だったんだな」

「…はい…」

「でもよかったな、良くなっているって先生言ってたぞ」

「え? 本当ですか? 」

「ああ、前は死にそうだったって言ってた。せっかく元気になってきているんだ、大事にしろよ」


 ちょっと信じられないような顔をしている悠。




 その後、一樹は事務所に戻って行った。


 一樹が事務所に戻って来ると、美恵が所長室やって来た。


「所長。京香さん、ちょっと行き過ぎています」

「どうしたんだ? 」


「今日お昼休みに、京香さんが所長との卑猥な写真を見せて回っていたんです」

「なに? 本当か? 」


「はい。露骨な写真もありました。それを見て、きっと、悠君はショックを受けたのではないかと思います」


 怒りが込みあがって来た一樹だが、あえてぐっとこらえた。


「所長。悠君の事、好きですよね? 」


 ゲッ…。
 気づかれたか?


 ちょっと動揺した目で見る一樹を、美恵はクスッと笑った。


「やっぱりそうだんですね? さっきの所長の顔見たら、絶対そうだって思いました」

「い、いや…その…」

 ごまかそうとしている一樹が可愛くて、美恵は微笑ましく見ている。

「私の勘は当たっていました? 」

「勘? 」


「悠君が女性ではないかって、前に言いましたよね? 」

「あ、ああ。そうだったな」


 動揺を隠すために、一樹は一息ついた。


「知ってたんですか? 所長」

「何をだ? 」


「悠君が、女性だって」

「そ、それは…」


「私、初めから気づいていましたよ」

「はぁ? 」


 美恵はニコッと笑った。
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