一樹君の恋人は天使なんです
「すみません。実は、数日前に末森財閥の方がここに来たんです」
「末森財閥? 」
「はい、それで。今日、お昼休みに末森昭三さんにお会いしたのです。その方は、私のおじい様の双子の兄弟で。私の事を養女として、引き取りたいと言ってきたのですが…」
「ああ、その話なら。弟の夏樹に俺も、今日聞いたばかりだ」
「え? 」
驚く悠に一樹は説明した。
弟の夏樹が間違われて、昭三に声を掛けられた。
昭三が悠を探している事を聞いて、昼休みに一樹を呼び出して話をしていた
昭三が悠を探している、ショッピングモールで一緒のところを見かけたと言われたが、行った覚えがなく、もしかして一樹と間違えていると思ったと夏樹は話した。
夏樹は一樹に、昭三さんが真剣に悠を探しているから一度会って欲しいと話して欲しいと言っていたと…。
「ああ、それなんですね。お昼休みに、一樹さんを見かけて似ている人と一緒だと思ったのですが…。あの人は弟さんなのですね」
「そっ。双子の弟。俺とは似ても似つかない、真逆の性格しているよ」
「そうなんですか? 前に、子供さんと一緒に病院で会ったことありますけど。真逆には感じませんでしたよ」
「そっか? 俺は、夏樹のように優しくもないし。あいつは、昔から優しくてとっても良い子だったし。それに比べて俺は、親に反抗ばかりだったし…」
じっと一樹を見つめて、悠は小さく笑った。
「一樹さんは正直なだけだと、私はも思っています」
ん? と、一樹は悠を見た。
「自分の気持ちに正直で、そのまま生きていただけなんだって思います。…ずっと…見ていましたから…」
悠はちょっと赤くなって俯いた。
「悠里…。俺も、ちゃんと話しておきたい事がある」
「え? 」
「悠里がどうして、ここに来てくれたのか。それは、亡くなった水穂子から聞いているんだ」
亡くなった人から?
死者の声が聞こえるの?
驚いた目で見ている悠に、一樹はそっと微笑んだ。