一樹君の恋人は天使なんです
「俺は昔から、見えないものが見えたり。聞こえないものが聞こえたり、亡くなった人の声が聞けたりするんだ。前に、悠里が自分から俺に秘密を打ち明けてくれた時。亡くなった水穂子が、真実を教えてくれた。…悠里が水穂子を、助けようとしてくれた事を。そのことで、ずっと、自分を責めていることも…」
「そうだったのですね。…だから、あんなに落ち着いていたのですね…」
「ああ」
「人間の中にも、例を見ることが出来る人もいるとは聞いていましたが。亡くなった人と話せる人は、初めてかもしれません」
「そうだな。初めは、俺も良く判らなくて。しっかり理解できたのは、お婆さんが無くなった時かな? お爺さんが残されちゃうから、頼むって俺に言ってきた時だったから。あんまり、見ないようにはしていたんだが」
「そうだったのですね…」
一息ついて、悠はまた一樹を見つめた。
「私がちゃんと話したいのは。…水穂子さんの事だけじゃなく、どうしてここに止まったかです…」
「ああ…」
「私がここにとどまってから、もう10年たちます。…水穂子さんが亡くなってずっと自分を責めて生きていきました。…隠れるように小さく…。人間の世界の事を学んで、できる仕事をて生きていました。名前は、おじい様が昔、末森と名乗っていたのを知っていたので使っていました。…10年経過してやっと、普通に暮らせるようになったので。…貴方の傍に行きました。…とおくからでもいいから、見守っていたいと思って…。なので、男性のふりをして行きました。同棲なら、恋愛感情も持たないし、迷惑もかからないと思って…」
フッと一息ついて、悠は一樹を見つめた。
「…ずっと、貴方を見ていました。水晶で、人間界を見るのがとても好きで。見ている時に、貴方を見かけました。…大学生の貴方と水穂子さんをずっと、見ていました。…でも気づいたら、私は…貴方に恋をしていました。…想いが膨らむばかりで…だけど、貴方には愛する人が居るから。…2人の幸せを見守ろうと…そう思う事で、諦めようとしていたのです…。それで…水穂子さんが死にそうになったので。…何も考えることなく、ここに来ました。…貴方の愛する人を、助けることが出来なくて。貴方を悲しませてしまったと…ずっとこの10年、悔やんでいました。…なので…仕事でも構わないから…貴方の力になれればと…そう思っていたのです…」
込みあがる思いで胸がいっぱいになり、悠は俯いてしまった。