一樹君の恋人は天使なんです
負けを認める時
それから数日後。
悠は昭三に連絡して、会う事にした。
以前お昼に一緒に行ったカフェで待ち合わせをした悠と昭三。
今日の悠は男性の恰好ではなく、女性らしくシックなワンピースでやって来た。
昭三はかっちりしたスーツだったが、ワンピース姿の悠を見ると、とても嬉しそうに微笑んだ。
「今日は先日のお返事を、しようと思いまして」
「はい」
悠は昭三を見て、そっと微笑んだ。
「私を養女に迎えて頂けますか? 」
「本当ですか? 」
「はい、財閥の事は良く判りませんので、これから勉強してゆきたいと思います。今まで、おじい様が末森という苗字だったと。おぼろげな記憶で、末森という苗字を使っていましたが。これからは、ちゃんと人間として生きてゆこうと決めました」
「そうですか。それなら、私の嬉しいです。無理はしなくていいので、貴女らしくこれからも生きて下さればそれで構いません」
「はい、そうさせて下さい」
暖かい笑みを向けてくれる悠に、昭三は感無量になった。
その頃一樹は。
事務所にある来客が来ていた。
ちょっとごっつい感じの、アメリカ人。
白人系で金髪の、ちょっと顔つきもイカツイ感じである。
「よく来てくれたね、ジャーニス」
「君のためなら、いくらでも動くよ。昔からの仲間だからね」
日本語も上手いジャーニスと呼ばれる男性。
この男性は一樹のアメリカでの同僚。
元検事でもあった彼は、敏腕弁護士である。
「君が頼んだ事、調べたよ」
ジャーニスは資料を一樹に渡した。
「これで彼女もおとなしくなる。ちょっと辛いが、出してみるといい」
「ありがとう…」
「この事務所でも、彼女はまだやっているのか? 」
「ああ、似たようなことをしている」
「あれは病気のようだ。刺激しても変わらないよ」
「そうだな…」