一樹君の恋人は天使なんです
それから翌日。
悠は退職手続きのため、事務所にやって来た。
仕事ではないため、直接所長室にやって来た悠。
「これで、いいでしょうか? 」
書類を書いて一樹に渡した悠。
その姿は…
いつもの男性の恰好ではなく、ちゃんと女性らしく清楚なブルー系のワンピースに白いヒールを履いていた。
いつもしていないメイクをちょっとだけして、唇にプルッと可愛いピンクのリップを塗っている。
「これでいいですか? 」
種類を渡して、ちょっと恥ずかしそうに悠が言った。
「ああ、完璧だ」
恥ずかしそうな悠に、一樹はそっと微笑んだ。
「これで、悠里って名前にちゃんと戻るんだぞ」
「はい…そうします」
「それで、これからの事なんだが」
「はい」
俯いている悠に、一樹はそっと歩み寄った。
「まず先に、これを・・・」
一樹のポケットから取り出されたのは、指輪のケース。
ケースを開いて一樹が指輪を見せると、悠は驚いた目をして潤ませた。
指輪は綺麗なタイヤモンド。
見ているだけでうっとりするくらい…。
一樹は驚いている悠の左手を取り、中指にそっと指輪をはめた。
サイズはピッタリで、悠の指にはまるととても輝いている。
「よかった、ピッタリで」
涙ぐんだ目で悠は一樹を見つめた。
「本当に、私でいいんですか? 」
「ああ、悠里は最高の人だから」
「…嬉しいです…。母にも、ちゃんと報告します」
「その時は、俺も一緒にいていいか? 」
「はい…」
涙がいっぱいの目で返事をする悠を、一樹はそっと抱きしめた。
それから…。
悠はちょっと気が引けると思ったが、他の社員達にも本当の事を話そうと決め、事務所に降りてきて男性のふりをしていた事を打ち明けた。
「…本当に…ごめんなさい…」
深く頭を下げている悠。
他の社員達は…。