一樹君の恋人は天使なんです
「父さんは嬉しかったぞ、お前と本気で喧嘩が出来て。喧嘩をすることで、お前の本当の気持ちがよく分かったからな」
「あんなに暴れていたのに? 」
「ああ、あれだけ暴れてくれたから。分かりやすかったよ」
ちょっと顔を背けて、一樹は鼻をすすった。
そんな一樹を見て悠里は、泣いていることを感じた。
「一樹。いつもで帰ってきていいぞ、ここはお前の家だ。そして、父さんも母さんも家族だ。夏樹も、お前も大切な息子だよ」
「…分かったよ…」
ちょっと可愛くない口調で言った一樹だが、胸がいっぱいでそれだけしか言えなかった。
「ありがとうな一樹。とても素敵な人を、選んでくれて」
「…一樹は、とっても見る目があるわ。…悠里ちゃん、私が病気で入院した時。助けてくれたでしょう? 」
え?
気づいたの?
驚いた目をしている悠里を見て、樹利亜はそっと微笑んだ。
「貴女が今日来た時確信したの。とっても暖かい感じがして、同じだったもの。一樹が好きになる気持ちも判るわ」
「いえ…」
「悠里ちゃん。一樹の事、お願いね。ちょっと俺様だけど、中身はとっても寂しがり屋さんなの」
「はい、分かっていますから大丈夫ですよ」
「あ、そうだ。悠里ちゃんに渡したいものがあるの、ちょっと一緒に来てくれる? 」
「はい」
樹利亜と悠里はリビングを出て、別の部屋に向かった。
忍と2人きりなると、一樹はどんな顔をしたらいいのか分からないようで、目を合わせないようにちょっと俯いていた
「一樹…」
俯いている一樹の隣りに来て、忍がそっと座った。
「な、なに? 」
急に隣に座られて、一樹は戸惑った目をしていた。