空白の夜
駅まで六分ほど歩いて電車を乗り継ぎ、西葛西駅で降りた。
駅前の居酒屋で、二次会の場所を決めるのに賑わう人々を横目に、自宅への道を歩く。
奴隷が足枷を引きずるようにして五分ほど歩くと、青白く光る建物が目に入り、僕は吸い込まれるようにそこへ向かった。
入り口の自動扉をくぐると、気が抜けるような入店音と同時に、今世間を賑わせているバンドやアイドルの曲が流れている。どれもうんざりするくらい聞いた曲だった。
冷えた飲料を閉じ込めた重いガラス扉を開き、缶ビールと缶チューハイ二つ、おつまみコーナーでは枝豆、生ハムを一つずつカゴに放り込んだ。
会計を済ませるためにレジへ向かおうとすると、いつもなら空いているはずが、今日は長蛇の列を作っている。
どうやら新人のアルバイトがレジを打ち間違えてしまったらしく、慌てて手元のお金とレジの画面を交互に覗く姿が見えた。
ゆっくり肩を落として息を吐きながら、最近は些細な事で苛立つ自分に気づく。
二分程して自分の番が回って来た。僕はお金を払って商品を受け取り、足早にその場を後にした。
自動扉をくぐり、再び夜の中を歩き出す。